東証の市場区分再編で再考すべきコーポレートサイトの役割りとは?

2022年01月12日

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現在、東京証券取引所(以下:東証)には「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQ(スタンダード・グロース)」の4つの市場区分がありますが、2022年4月4日以降「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの市場区分に再編されます。

本コラムでは、東証の市場区分再編の背景と課題を整理し、それら課題解決に向けてのコーポレートサイトの役割りとリニューアルのポイントについて解説します。

1.東証市場区分再編の背景と課題

現在の東証において4つの市場区分の成り立ちは、2013年に東証と大阪証券取引所が株式市場を統合した際に上場会社や投資者に影響が出ないように、それぞれの市場構造を維持したことによるものです。その上で、今回の市場区分再編を行うに当たっての課題は大きく3つあったとされます。

  • 課題1.市場コンセプトが曖昧になっている
  • 課題2.持続的な価値向上への動機付けが非常に不十分になっている
  • 課題3.機能性と市場代表性を持つ指標というものが不在である
東京証券取引所 2022年4月4日再編後の市場区分(JPX 日本取引所グループ:市場区分見直しの概要より引用)

課題1.は、各市場に属する企業の特徴が経年により曖昧になってしまっている点です。投資家の視点で捉えた場合、いわゆるトップ市場については、その国を代表する指標として注目が集まります。新興市場については、成長性が最も注目されるなど、元来は区分に応じて評価するポイントが変わっていくはずですが、そのようになっていない(分かりにくい)状況であること。

課題2.は、特定の市場に所属する企業が多くなることで、市場としての魅力が薄まってしまっている点です。全上場企業の半分以上が東証一部に所属しており、日本のトップ市場としての魅力が分かりづらく(見えなく)なってしまいました。今後は投資家が企業・銘柄を選択しやすくなる環境づくりに向けて、日本の代表市場としてのプライム市場ほか、各市場の特性を際立たせていく必要があること。

課題3.は、市場区分再編後の各市場の特徴(狙い)にあります。プライム企業はグローバルに通用する日本のリーディングカンパニーであり、スタンダード企業はドメスティックではあるが信頼感の高いパブリックカンパニーであるといえます。グロース企業は成長に重きを置いたハイリスク・ハイリターンを伴う成長企業が属するというように、各市場に対して明確な色分けをしていく狙いがあり、それが今回の市場区分再編の本来の目的になります。

ただし、レギュレーションはあくまでレギュレーションに過ぎず、ただ従っていれば良い(必要条件を満たしていれば良い)という時代ではありません。
元来、市場区分の再編は企業の視点で捉えた場合、投資家に自分たちを見出してもらう(自分たちを認めてもらう)ための色付けが目的であり、それに相応しいIR及び情報開示を行う必要があるからです。

2.東証市場区分再編とIRのありかた

ご存知の通り、IRの開示には「法定・適時開示」に加えて「任意開示」の2つの領域があります。今回の市場区分再編で企業の特徴をより明確にする目的を踏まえると、今後は任意開示の充実がより求められる変化を見逃すことはできません。

上場及び上場維持基準のレギュレーションが変わり、これからの時代の物差しとして企業が従うべき法定・適時開示に関する評価基準が明確に(分かりやすく)なる一方、今回のレギュレーションの変化が市場区分の歪さ(不明瞭さ)の解消によって、その先の企業価値の最大化を目論み、後押しする施策の一つであると捉えることが大切ではないでしょうか。

旧来型の日本の株式市場・上場企業においては、金融商品取引法・会社法といった法律に縛られながらIR(企業情報)の開示を考えてきました。その上で取引所の要請に応える流れが企業のスタンダードであり、だからこそ、これまではルールに従えば安心(それで良しとされる)だったといえます。
しかし、今後はグローバルな資金獲得が前提となり、今まで以上に企業の特徴(個性・企業らしさ)を伝えるメッセージを発信することが必要になります。

公の基準に沿った法定・適時開示と並行して、より一層の任意開示の充実によって、しっかりと自社の良さや目指している姿・戦略が強く伝わる(はっきりと見える)、つながるというメッセージの発信を考える必要があるのです。

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3.東証市場区分再編とサスティナビリティコンテンツの重要性

東証市場再編の変革期において、企業の視点では、いかに投資家に自社らしいメッセージを届けていくのかが重要になります。中でも、すでに投資家の視点において全世界的な取り組み課題であるサスティナビリティに対する具体的配慮が強く求められています。

プライム企業はもともと東証一部に属していた企業であり、事業や財務といった側面はすでに市場からある一定の評価をされています。今後は成長性や事業安定性だけではなく、企業として社会に適合しながら持続していけるか、さらに安定的に成長できるかという点が注目されることになります。

グロース企業は成長性が注目されますが、世界規模でSDGsの実現を目指す現代の成長性は、以前のベンチャー企業で認められた一過性の成功ではなくなっています。将来性の評価基準として、経営戦略に社会の課題やニーズにどれだけ応えていけるサービスや商品を提供できるのかが、最も重要な観点の一つとなります。

SDGsへの適応を軸に企業のサステナブルな発展に寄与する指標が何なのかについて、今後はより精査が進むと考えられ、投資家の視点による一様の指標が深化(細分化)することは間違いありません。企業には拡大期~多角期~再生期を繰り返す発展のサイクルがあるとされますが、その中でも一貫して発信するメッセージについて、プライムだからグロースだからという差はなく、今後はSDGsに対する具体的貢献と目標達成度など、サスティナビリティ(持続可能性)についての姿勢を示す必要があります。

また、このような状況は企業が自社のメッセージを市場に向けて活発に発信することさえできれば、そのメッセージをインプットとして投資家が正当な評価(期待)をかけたいという思いを強く持ち始めていることを示しています。
企業が投資家の期待を受けとめるためには、単純にルールに適応(レギュレーションに対応)するだけではなく、事業のサスティナビリティ性を指標化して積極的に発信していくことが重要であり、その姿勢の根拠となるサスティナビリティコンテンツの充実と発信精度の向上が必須といえるのです。

サスティナビリティ(SDGsコンテンツ)について詳しくはこちら

4.東証市場区分再編と多言語サイトの必要性

前述の通り、これからの企業にとって全世界の投資家との対話の重要性が高まっています。特にプライム企業においては、今回の市場区分再編を機に今後の事業成長のカギとなる海外投資家に向けての具体的対応(対策)が必要です。

SDGsの最重要課題とされるカーボンニュートラルをはじめ、全世界の企業がサスティナビリティ経営にシフトしています。サスティナビリティ経営を前提として、これからの企業がどのような経営をすべきなのか、長期戦略をどのように描くのか、どう変化すべきかについてしっかりと経営者の考えを投資家に伝えていくことが大切になります。

今後は国内海外を問わず、法定・適時開示はもちろん任意開示についても和文・英文ともに開示することが前提となり、さらに英文以外の多言語対応によってよりグローバルな展開を目指すべき時代になったことは間違いありません。
また、たとえ英訳されて(その他言語に訳されて)いたとしても、言葉だけ(言い換えレベル)の翻訳では不十分であり、あくまで経営の意図やその熱量(想い)が伝わる翻訳が非常に重要になると考えられます。

上場企業(特にプライム企業)において、全世界の投資家向けたコーポレートサイトの多言語対応と翻訳精度向上の必要性が高まっているのです。

多言語対応(グローバルサイト)について詳しくはこちら

5.まとめ(東証市場区分再編を機に考えるコーポレートサイトの役割り)

東証市場区分再編の狙い(現在の課題)とは何か、これからのIRに求められる変化とは何か、その潮流をなすサスティナビリティ(サスティナビリティコンテンツ)訴求、グローバル展開(自社が発信するメッセージの多言語化)についてご紹介しました。
そして、これらの対応の核心は、企業のコミュニケーション基盤となるコーポレートサイトの役割りの再定義であり、それを体現するコーポレートサイトへの移行(リニューアル)の検討といえるのではないでしょうか。

これからの時代の企業においては、今までの画一的なIR活動以上に企業自らが企業価値を定義し、定量化・指標化を試み、よりタイムリーで積極的なコミュニケーションが必要となります。
投資家のみならず消費者、取引先、従業員など、関わるステークホルダーそれぞれに最適化されたメッセージを部分一致で終わらせることなく、企業の意思として包括的かつ明確なメッセージとして発信し続けること(一貫性)が重要です。

現在、世界の企業価値比較においてアメリカの企業価値が日本企業の3倍前後、同じくイギリスの企業価値が2倍前後とされる所以が、企業自らが発信するメッセージに対する評価(期待)の差であることを十分に意識しなければなりません。

このことは、企業の会計上の簿価である純資産・財務資本情報(市場のレギュレーション領域=法定・適時開示の対応範囲)が同じ1であることに対し、その差分(1倍を超える部分)は今現在の企業価値から将来の企業価値を投資家が算定する非財務資本情報(市場のレギュレーション以外の領域=任意開示の対応範囲)の欠落によるところが大きく、例えば、すでにサスティナビリティ観点での非財務資本情報をしっかりと伝えることが重要とされていることでも、このような世界的投資基準が確立されているのです。

今後は、企業により多くの非財務資本情報の発信が求められ、将来の企業価値を市場に訴求していくこと、それにより投資家の評価(期待)を引き出すコミュニケーション(新しいIR)が重要になることは明白です。

従来型の画一的なIRから脱却するためにも、企業自らが発信するメッセージに一貫した企業らしさ(目指す姿・理念・文化など)が伝わるコミュニケーションが重要であり、そのコミュニケーション基盤として今のコーポレートサイトが相応しいかどうか、今回の東証市場区分の再編を機に再考が必要なタイミングといえるのではないでしょうか。

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