この記事では、CMSを熟知したエンジニアが、Webサイトの運営に欠かせないCMSについての基礎知識や、
仕組み、活用方法などを分かりやすく解説します。
そもそもCMSとはどのようなツールであるかや、最新動向を知りたいという方、WebサイトへのCMSの導入を検討している方に役立つ内容となりますので、ぜひご覧ください!
CMSとは?
CMS(コンテンツ管理システム)とは、Webサイトの構成要素を保存・管理し、サイトの構築や編集など必要な処理を行うシステムのことです。 CMSを利用することで、専門的な知識がない人でも、テキストや画像の登録といった簡単な操作でWebサイトを更新・管理することができ、コーポレートサイトやオウンドメディアなど、多くのWebサイト運用において欠かせないツールです。
CMSの役割と歴史
CMSが担う役割
インターネット環境の進化や、デバイス・プラットフォームの多様化により、現在の消費者は、検索エンジンやSNS、動画コンテンツなど複数のチャネルを横断しながら、能動的に情報を収集するようになりました。
これに伴い、ユーザーとのタッチポイントは多様化し、情報収集から購買に至るまでの意思決定プロセスは、ますます複雑化しています。
また、検索エンジンのアルゴリズムも頻繁に更新されており、
近年は特に「ユーザーの検索意図に沿った、信頼性の高いコンテンツ」を重視する傾向にあるため、企業のWebサイトには、ユーザーにとって価値ある情報をタイムリーかつ的確に届けることが求められています。
そこで注目されているのが、良質なコンテンツを継続的に発信する「コンテンツマーケティング」です。
これはSEO(検索エンジン最適化)による検索順位の向上にとどまらず、ステークホルダーとの信頼構築や企業価値、さらには売上向上にも直結するため、多くの企業が戦略的に取り組んでいます。
しかし、いかに優れたコンテンツであっても、更新や管理がスムーズに行えなければ、十分な効果を発揮できません。さらに、運用にかかる負荷が大きすぎると、継続的なコンテンツ更新や品質維持が難しくなるリスクも生じます。こうした課題を解決する手段として、多くの企業が導入しているのが
CMS(コンテンツ管理システム)です。
CMSは、コンテンツの制作から更新、公開、運用までを一元管理できる仕組みであり、目的や要件に合ったCMSを選ぶことで効率的な運用体制の構築と、ユーザー体験の向上の両立を可能にします。
つまり、CMSは単なる更新ツールではなく、コンテンツマーケティングの成功において欠かす事のできない重要なツールであり、企業経営の一翼を担う役割を担っているのです。
CMSの歴史
ここからは登場から現在に至るまでのCMSの歴史について説明していきます。

-初期CMSの登場
1995年、CMSの原型となるWebコンテンツ管理システムが開発されました。 こちらは企業やメディア組織が、内部のITスタッフによる使用を想定して作られたもので、高度なIT知識を要するものでした。
-CMSの商用化
1990年代後半には、大規模な企業や団体向けに、大量の情報を複数人で管理できるように、高機能なCMSが登場しました。 こちらは高価なものが多く、一般ユーザーに普及はしませんでしたが、権限管理やワークフロー機能、セキュリティ対策など企業のニーズに応えるものでした。
-オープンソースCMSの台頭
2000年代に入ると、オープンソースのCMSが登場しました。 こちらは無料でソースコードが公開されており、誰でも自由にカスタマイズやコードの変更をして使用できるCMSです。 オープンソースの性質が手伝い、世界中のユーザーによる情報交換が盛んに行われ、CMSの普及が急速に進みました。
-SaaS型CMSの発展
2010年代に登場したSaaS型CMSは、月額料金を支払いサーバや実行環境を借りる形で、ユーザーはWebサイトの管理画面や公開画面のみの管理で使用できるCMSです。 インフラ部分の管理は任せられるので、より手軽で低コストなWebサイト管理が可能になりました。
-ヘッドレスCMSの登場
2020年代に入ると、従来のCMSとは異なる「ヘッドレスCMS」が注目を集めるようになりました。 従来のCMSでは、コンテンツの管理とWebページの表示が一体化していましたが、ヘッドレスCMSはこれらを分離し、 APIを通じて自由にコンテンツを配信できる仕組みとなっています。
このように、CMSはより身近で使いやすいものへと変化を遂げ、多くの企業や個人ユーザーが使用するようになりました。
CMSの仕組み
CMSは、画像やテキストなどのコンテンツをデータベースで管理し、それらの情報をもとにWebページ(HTML)を自動的に生成する仕組みです。
具体的には、以下の2つの要素を組み合わせることでページを生成します。
画像やテキストなどの「コンテンツ」
ページのレイアウトなどの情報を持つ「テンプレート」
例えばブログのようなページであれば、タイトルはこの部分に、画像や本文はここに、といったような指定をしたテンプレートを用意します。 記事ごとにタイトルなどを設定すると、入力されたコンテンツに応じたページが、入力内容に対応する部分以外は全て同じレイアウト、デザインで出力されます。
CMSがない時代には、1つ記事を追加するためには1ページ分のHTMLを人の手で書き直す必要がありましたが、CMSはそれを自動化してくれるツールといえます。
CMSの種類と主な機能
CMSの種類
ここでは、CMSの種類を仕組みの違いから説明していきます。
CMSは、ページを生成するタイミングの違いから、動的・静的CMSに分類されます。
動的CMS
動的CMSは、ユーザーがページにアクセスしたタイミングで生成されます。 アクセスのあったタイミングやユーザーに合わせて最適なコンテンツを表示することができるという点がメリットですが、アクセスのたびにデータベースから情報を取得してページを生成するため、表示スピードが遅くなることがあります。
静的CMS
一方、静的CMSは管理者が更新をかけたタイミングでHTMLが生成されます。 ユーザーのアクセス時にあらかじめ用意したHTMLが表示されるため表示スピードが速いというメリットがありますが、サイトの規模が大きいと運用時に更新に時間がかかってしまう点や、リアルタイム性で動的CMSに劣ってしまう点がデメリットです。
オープンソース、クラウド、パッケージ、ヘッドレス等での違いについては、以下のコラムで詳しく解説しています。
関連コラム:【法人向けおすすめCMS】種類や特徴、導入の注意点を徹底解説
CMSの主な機能
CMSには、Webサイトの運用に便利な機能が充実しています。 ここではCMSの主な機能を3つご紹介します。

①コンテンツ管理機能
ニュースなどの更新性のあるコンテンツの記事の作成・編集や、各ページに掲載する画像やPDFファイルの管理がCMSのメインの機能です。 公開中の記事やファイルを一覧で確認できるほか、記事の公開日時を指定して予約投稿したり、公開前にプレビューすることも可能です。
②ユーザー管理機能
各ユーザーの操作履歴の確認や、ユーザーやユーザーグループごとにアクセス権限を分けることができます。
ユーザーに編集者、承認者などのロールを割り当てて記事公開までの承認フローを設定することもできるので、スムーズな運用を実現できます。
③マーケティング機能
GoogleAnalyticsと連携してアクセス解析を行なったり、お問い合わせフォームを設置することができます。 他にもSNSと連携するなど、様々なマーケティング施策と紐付けてWebサイトを運用できます。
代表的なCMSは?
国内における代表的なCMSには、WordPress、Movable Type、PowerCMS、Sharewithなどがあり、近年ではStudioやmicroCMSといったノーコード・ヘッドレスツールも注目されています。

現在、世界には数百種類のCMSが存在するといわれています。
日本国内では、海外製のオープンソース型CMSと国産CMSの両方が利用されており、企業の規模、予算、用途や目的に応じて最適なCMS選ぶことがセオリーです。
中でも特に利用率が高いのがWordPressです。
W3Techsの調査によると、日本語で構築されたWebサイトの約8割がWordPressを利用しているという結果が報告されており、国内におけるCMSシェアの大部分を占めています。
以下では、ノーコード型CMSを含め、日本国内で利用されている代表的な6つのCMSの特徴をご紹介します。
1.WordPress
世界シェア、日本国内シェアともにトップを占めています。オープンソース型でプラグインも豊富にあるため細かいニーズに対応可能で、個人から大企業まで幅広い層に利用されています。
関連コラム:WordPressは企業サイト向き?機能や特徴、メリットを一挙に紹介!
2.Movable Type
国産のCMSでサポートも充実しています。ライセンス購入の必要はありますが、セキュリティ対策など信頼性が高く、官公庁や教育機関などでの導入実績が多くあります。
関連コラム:Movable Type (ムーバブルタイプ)とは?特徴や機能、導入メリット
3.PowerCMS
Movable Type 6をベースに開発された国産CMSで、高度なカスタマイズ性と堅牢なセキュリティを兼ね備えています。同様に官公庁や教育機関などでの導入実績があり、大規模なサイトにも対応可能です。
関連コラム:「PowerCMS」と「PowerCMS X」の違いについて
4.Sharewith
国産CMSで、特にわかりやすく誰でも使いやすい管理画面となっているのが特徴です。IRページ構築にも強く、上場企業でのシェア率が高いCMSです。
関連コラム:Sharewithとは?特徴と機能 ー企業サイトへの導入増クラウドCMS
5.Studio
ドラッグ&ドロップ、クリックなどの直感的な操作のみで、いわゆるノーコードでのCMS構築・運用が可能です。2018年リリースと比較的新しいCMSでありながら、国内代表格となるほどシェアが拡大しているCMSです。
関連コラム:ノーコードツール「STUDIO」の特徴、企業サイトでの活用法やメリット
6.microCMS
国産のヘッドレスCMSで、APIを利用して柔軟なコンテンツ管理が可能です。こちらも2019年リリースという新しく勢いのあるCMSで、Webサイトやアプリのバックエンドとして幅広く活用されています。
関連コラム:ヘッドレス(Headless)CMSとは?特徴、機能比較など徹底解説
CMSの活用事例
ここからは、CMSの具体的な活用方法について解説します。
近年のWebサイトには、リアルタイムの情報更新やモバイル対応、SNSとの連携、強固なセキュリティ対策など、より高度な機能と柔軟な運用が求められています。
加えて、アクセス解析を活用したマーケティング施策の重要性も高まり、Webサイトの役割はますます広がっています。
こうした多様なニーズに手動で対応するのは手間も知識も必要となるため、効率的な運営にはCMSの活用が欠かせません。CMSを導入すれば、専門知識がなくてもテキストや画像の編集、ページの追加・削除が簡単に行えるようになります。
また、権限管理によって複数人での運用もスムーズになり、業務の分担がしやすくなります。さらに、プラグインや拡張機能を活用すれば、SEO対策やセキュリティ強化、表示速度の最適化などにも対応でき、効率的かつ高品質なWebサイト運営が可能になります。
主なサイト種別のCMS活用事例
①コーポレートサイト
コーポレートサイトは、企業の公式情報を発信する重要な役割を担い、ニュースやIR情報などの更新が頻繁に発生します。 そのため、更新作業の負担軽減や情報発信の効率化が求められ、多くの企業がCMSを導入しています。
CMS導入前のよくある課題
・社内の複数部門が関与するため、更新作業の負担が大きく、運用スキルにばらつきがある
・IR情報やプレスリリースの管理が煩雑で、タイムリーな発信が難しい
・英語をはじめとした多言語対応が不十分で、海外向け情報発信ができていない
CMS導入による効果
✓他部門が関わるコンテンツの管理・更新が容易になり、質やリソース不足の問題を解消
✓IR情報やプレスリリースの管理がスムーズになり、投資家やステークホルダーへの情報提供を強化
✓英語・多言語切り替え機能を搭載したCMSにより、海外投資家からのニーズに対応
②オウンドメディア
オウンドメディアは、自社サービスに関連する情報や専門性の高い技術情報などを発信し、サービス認知度向上やリード獲得を目的として運営されます。 事業への影響度が高いため、効率的なコンテンツ更新やSEO対策を強化するために、CMSが活用されています。
CMS導入前のよくある課題
・記事の更新作業が属人化しており、定期的な発信が難しい
・カテゴリーやタグの整理が不十分で、ページ内の回遊率が低い
・SEO対策が不十分で、検索流入が伸び悩む
CMS導入による効果
✓記事の更新が簡単にできるため、タイムリーな情報発信が可能に
✓カテゴリーやタグの整理が容易になり、ユーザーの回遊率が向上
✓SEOに強いCMSを導入し、サイト構造の最適化により自然検索からの流入が増加
③採用サイト
採用サイトは、求職者に向けて企業の魅力を伝え、エントリーを促進する役割を担います。ターゲット世代に最新の採用情報をタイムリーに発信し、スマートフォン対応やSNS連携も強化するために、多くの企業がCMSを導入しています。
CMS導入前のよくある課題
・採用情報の更新が遅れ、最新の募集状況が反映されていない
・SNSとの連携ができておらず、求職者の興味を惹きづらい
・スマートフォン対応が不十分で、求職者の離脱率が高い
CMS導入による効果
✓採用担当者が直接更新できるため、最新の募集情報を反映
✓SNSと連携し、求職者への訴求力を強化
✓スマートフォンの最適化を行い、あらゆるデバイスからでも快適に閲覧できる環境を整備
④ポータルサイト
ポータルサイトは、社内やコミュニティ向けに情報発信を行うプラットフォームとして活用されており、大量のコンテンツの一元管理や、情報制御・セキュリティ強化のため、CMSによる管理が一般的です。
CMS導入前のよくある課題
・マニュアルやツールが散在しており、必要な情報をすぐに見つけられない
・会員ごとに閲覧制限を設定できず、適切な情報提供が難しい
・セキュリティ対策が不十分で、情報の管理に不安がある
CMS導入による効果
✓マニュアルや資料の一元管理が可能になり、情報検索の効率化できる
✓会員向けの閲覧制限機能を実装し、適切な情報提供が実現
✓権限管理やアクセス制御により、セキュリティレベルを向上
上記は一例ですが、CMSは多種多様なサイトで導入されています。
どのようなCMSを選ぶべきか
CMSが身近になったことで多くの製品が生まれ、Webサイトで実現したいことやコスト面など様々な観点からCMSを選択できるようになりました。 どのようにして選んでいけば良いか、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
関連コラム:CMSの選び方や選定基準をわかりやすく解説【比較表掲載】
まとめ
本記事では、CMSの基本から歴史、主な機能や種類、活用方法までを専門家の視点で解説しました。
適切なCMSを選び、正しく構築・運用することで、Webサイトの価値を高め、ビジネスの可能性を広げることができます。
サイトの見直しや改善をお考えのご担当者さまは、まず自社の課題や目的を整理し、CMSの導入やリプレイスも合わせて検討することから始めてみてはいかがでしょうか。
当社のCMS構築/サイト制作実績
\大手企業サイトから、低コストで始められるサイトまで構築実績が豊富/
Webサイト制作・CMSのことなら「マイクロウェーブクリエイティブ」へ!

当社はCMSを用いたWebサイトの構築から運用まで一貫した支援を行い、幅広い規模の対応実績やノウハウがあります。
CMSに関するキャッチアップも盛んで、近年話題のヘッドレスCMSにも対応可能です。
費用を抑えた料金プランもありますので、ぜひお気軽にご相談ください!
この記事の著者

マイクロウェーブクリエイティブ バックエンドグループ
CMS、Webアプリケーション、開発・プログラミングに関する情報などエンジニア目線で深く切り込んだ情報を発信します。